通信業界の人手不足はなぜ起きる?人手不足の原因と不足職種をデータで整理

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通信業界では、人手不足の状態が長く続いています。背景にあるのは、5Gエリアの拡大に加え、設備のクラウド化や運用の高度化が一気に進んでいることです。仕事の量が増えているだけでなく、求められる知識や対応力も広がっています。

ただ、「なんとなく人が足りない」と捉えるだけでは、原因を見誤りやすくなります。現場で起きているのは、単純な人数不足ではなく、需要の増加、必要スキルの変化、24時間体制の負荷、育成の遅れが重なった構造的な問題です。

この記事では、統計データをもとに通信業界の現状を整理しながら、人手不足がなぜ解消しにくいのかをわかりやすく見ていきます。あわせて、職種ごとの課題や対策、転職で有利に動くための考え方もまとめました。

感覚ではなく、データと構造で状況をつかむこと。それが、採用する側にも転職を考える側にも、大きな強みになります。ここから順番に見ていきましょう。

編集部(HR Div.)

人手不足は、気合いや根性だけでは解決できません。需要の増え方、必要スキル、当番体制、育成の仕組みまで含めて考えると、打ち手が見えてきます。

目次(タップできます)

通信業界の人手不足は、需要増とスキルの広がりが重なり、短期では解消しにくい

編集部(HR Div.)

通信業界の人手不足は、景気の波で一時的に起きているものではありません。

需要が増え続ける一方で、現場で必要とされるスキルも広がっており、その両方が同時に進んでいます。だからこそ、短期間で一気に解消するのが難しい状況です。

通信業界の人手不足は、「需要増」「スキルの広がり」「24時間体制」が重なって起きる、解消しにくい構造問題です。

人手不足が長引く主な理由
  • 5G拡大と運用の高度化で、設計より先に運用・最適化の人手が足りなくなりやすい
  • クラウド化やセキュリティ対応が進み、ネットワーク単体の知識だけでは追いつきにくい
  • 大規模障害の予防と復旧を支えるために、24時間の当番体制が欠かせない
  • 経験者採用に偏ると採用競争が激しくなり、賃金上昇と離職が連鎖しやすい

5G拡大と運用の高度化で、設計よりも先に運用・最適化の人手が足りなくなる

5Gの基地局は全国で増え続けています。エリアが広がれば、そのぶん監視、調整、保守の仕事も増えていきます。

人手不足というと「設計できる人が足りない」と思われがちですが、実際には運用や最適化の担当のほうが先に足りなくなるケースが少なくありません。基地局が増えれば、障害対応や品質改善の作業も日常的に増えるからです。

とくに都市部では、電波の混雑やビル影の影響で通信品質が不安定になりやすく、きめ細かなチューニングが欠かせません。ここを放置すると、利用者の満足度はすぐに落ちてしまいます。

ネットワークは、作って終わりではありません。安定して動かし続けてこそ価値が出ます。そのため、運用人材の不足が業界全体の弱点になりやすいのです。

クラウド化とセキュリティ強化が進み、ネットワークだけの知識では埋まりにくくなった

最近の通信設備は、従来の専用機器だけで完結しません。クラウド上で動く仕組みや、仮想化された環境を前提にした設計・運用が増えています。

そのため、ネットワークの知識に加えて、サーバー、仮想化、クラウドの理解も欠かせません。さらに、サイバー攻撃への備えとしてセキュリティの知識も必要になります。

ひとつの分野に詳しいだけでは、現場全体をカバーしきれない場面が増えました。企業としては複数領域をまたいで動ける人を採りたいものの、そうした人材は市場に多くありません。

必要なスキルが広がるほど、育成には時間がかかります。その結果、即戦力の奪い合いが起こりやすくなっています。

大規模障害の予防と復旧には当番体制が必要で、見えにくい人手が常に必要になる

通信は社会インフラです。ひとたび止まれば、生活にも仕事にも大きな影響が出ます。

そのため、24時間365日の監視体制が必要です。夜間や休日も含めて、誰かが対応できる状態を維持しなければなりません。

こうした当番体制を無理なく回すには、ある程度の人数が必要です。ぎりぎりの人数で回そうとすると、一人ひとりの負担が重くなり、疲労の蓄積や離職につながります。

障害を未然に防ぐ仕事と、起きた障害を復旧する仕事の両方を回すには、表に見えにくい人手が常に必要です。これが、現場で人手不足を強く感じやすい理由のひとつです。

経験者採用に偏ると、採用競争が激しくなり、賃金上昇と離職が連鎖しやすい

多くの企業が即戦力を求めるのは自然なことです。教育の負担を抑え、早く戦力化したいからです。

ただ、経験者だけを狙う採用に偏ると、同じ人材を複数社で取り合うことになります。結果として、給与や条件の競争が激しくなります。

条件が上がること自体は悪いことではありません。ただし、条件面だけで転職が繰り返されるようになると、職場に人が定着しにくくなります。

育成を後回しにして経験者採用ばかりに頼ると、賃金高騰と離職増の悪循環に入りやすくなります。これも通信業界で人手不足が長引く大きな理由です。

公式データで見る通信業界の人手不足、まず押さえたい指標は4つ

編集部(HR Div.)

人手不足を正しく見るには、感覚だけでは不十分です。

e-Statなどの公式データを確認すると、どこで不足が起きているのか、何がボトルネックなのかが見えやすくなります。まずは、次の4つを押さえておくと全体像をつかみやすくなります。

e-Statは、日本の統計が閲覧できる政府統計ポータルサイトです

指標わかること
就業者数情報通信業の規模や増減。需要の伸びに人材供給が追いついているか
過不足判断指数人手不足感の強さ。他業種と比べてどの位置にあるか
求人と求職の動き採用難の原因が母集団不足なのか、条件設計の問題なのか
工事側の就業者数と年齢構成現場供給の制約と、将来の人材減少リスク

就業者数を見ると、情報通信業の規模と増減がわかり、体感とのズレを減らせる

総務省などが公表している就業者数のデータを見ると、情報通信業の規模がどの程度なのかを確認できます。

全体の人数が増えているのか、横ばいなのか、それとも減っているのかを見るだけでも、業界の動きはかなり見えます。

需要が伸びているのに就業者数がほとんど増えていなければ、人手不足は強まりやすくなります。逆に、就業者数が増えていれば、少なくとも供給側がまったく動いていないわけではないと判断できます。

体感ではなく数字で確認することが、判断のズレを減らす近道です。採用計画にも、転職のタイミングを考えるうえでも役立ちます。

国勢調査 平成27年国勢調査 抽出詳細集計(就業者の産業(小分類)・職業(小分類)など)

過不足判断指数を見ると、不足感の強さを他業種と比べて把握できる

日銀短観などには、人手の過不足感を示す指数があります。こうした指標を見ると、その業界で不足感がどれくらい強いのかを相対的に把握できます。

通信業界単体で見るだけでは、強い不足なのか、一般的な範囲なのか判断しにくいことがあります。そこで、製造業や建設業などと比べると、位置づけがわかりやすくなります。

不足感が強い業界ほど、採用競争は激しくなりやすい傾向があります。転職を考えている人にとっては、追い風になりやすい局面もあります。

日本銀行公式サイト 短観(確認箇所:雇用人員判断DI)

求人と求職の動きを見ると、採用難の原因を切り分けやすい

求人倍率や応募の動きを見ると、求人数と求職者数のバランスがわかります。

求職者そのものが少ないなら、母集団不足が起きています。一方で、候補者はいるのに応募が集まらないのであれば、給与、勤務地、働き方、要件設定などに課題があるかもしれません。

原因が違えば、打つべき対策も変わります。ただ求人を出し続けるだけでは、解決しないことが多いのです。

厚生労働省 一般職業紹介状況(令和8年1月分)について

工事側は、電気通信工事の就業者数と年齢構成を見ると将来の供給制約が読みやすい

通信インフラを現場で支えているのは、工事担当者です。設備を設置し、保守し、現地対応を担う人がいなければ、計画だけでは前に進みません。

電気通信工事の就業者数や年齢構成を見ると、現場の人材供給が今後どうなるかをある程度見通せます。

高齢化が進んでいれば、数年後に一気に人が減る可能性もあります。いまの人数だけで安心できないのは、そのためです。

年齢構成の偏りは、将来の人手不足を先回りして教えてくれるサインです。だからこそ、早めの採用と育成が欠かせません。

e-Stat 労働力調査データ

人手不足の根本原因は、人口動態だけではなく、仕事設計と育成設計の弱さにもある

編集部(HR Div.)

人口減少が大きな要因であることは間違いありません。

ただ、それだけで片づけてしまうと、本質を見落とします。現場では、仕事の切り分け方や採用要件の作り方、育成の進め方にも課題があります。

根本原因として見ておきたい構造
  • 要件を盛り込みすぎて応募が減る。MustとNiceが分かれていないと採用が詰まりやすい
  • 属人化が強いと引き継ぎの負担が急増し、退職が連鎖しやすい
  • 24時間運用は、シフト設計が甘いほど疲弊しやすく、離職が増える
  • 工事職は安全と品質の責任が重く、一人前まで時間がかかるため供給が追いつきにくい

要件を盛り込みすぎると応募が減る MustとNiceを分けない採用は詰まりやすい

求人票に条件を詰め込みすぎている企業は少なくありません。

本当に必要な条件と、あれば望ましい条件が分かれていないと、応募できる人の幅が一気に狭くなります。少しでも足りないと感じた人が、応募をためらってしまうからです。

MustとNiceを切り分けるだけでも、応募数は変わります。採用がうまくいかないときは、まず求人票の設計を見直すべきです。

属人化が強い職場ほど、引き継ぎ負担が膨らみ、退職が連鎖しやすい

特定の人しかわからない仕事が増えると、引き継ぎは一気に難しくなります。

誰かが辞めた瞬間に、残った人の負担が急に重くなり、その負担がまた次の退職を生むこともあります。

マニュアル化や情報共有は、地味ですが人手不足対策の土台です。属人化を減らすことが、定着率の改善にもつながります。

24時間運用の現場は、シフト設計が甘いほど疲弊しやすく、離職につながる

夜勤や休日勤務がある職場では、シフトの組み方そのものが重要です。

無理な連続勤務や、急な呼び出しが続く環境では、体力も気力も削られていきます。休みを取りにくい職場では、長く働き続けるのが難しくなります。

人は、やりがいだけでは定着しません。無理のないシフトと十分な休息を確保することも、人手不足対策の一部です。

工事職は安全と品質の責任が重く、短期間で一気に育てにくい

電気通信工事では、安全管理が何より重要です。

高所作業や重機の使用など、危険をともなう場面も少なくありません。だからこそ、知識だけでなく、現場での判断力や手順の徹底が求められます。

その分、一人前になるまでにはどうしても時間がかかります。

短期間で大量に育てにくい仕事ほど、人手不足は長引きやすい。工事職の不足が解消しにくいのは、この事情が大きいからです。

通信業界で人手不足が深刻になりやすい職種は、4つに分けて考えるとわかりやすい

編集部(HR Div.)

ひと口に通信業界といっても、仕事内容はかなり幅があります。なかでも、人手不足が深刻になりやすい職種は大きく4つに整理できます。

職種不足が深刻化しやすい理由
NOC運用監視、障害対応、変更管理が同時に走り、負荷が積み上がりやすい
無線RAN設計、最適化、現地対応が分かれやすく、連携不足で手戻りが起きやすい
伝送/バックホール装置、光、IPをまたぐ知識が必要で、育成に時間がかかる
電気通信工事施工と施工管理の両方を育てる必要があり、供給が詰まりやすい

NOC運用は、監視・障害対応・変更管理が重なり、負荷が積み上がりやすい

NOCは、ネットワークを監視する中枢のような役割を担う現場です。

日々のアラーム監視だけでなく、障害対応や設定変更も並行して進みます。ひとつのミスが広い範囲に影響することもあるため、高い集中力が求められます。

業務が重なりやすく、慢性的に負荷がかかりやすい職種です。誰かが抜けると、そのしわ寄せがすぐに周囲へ広がります。

無線RANは、設計・最適化・現地対応の分断が手戻りを生みやすい

RANは、無線アクセスネットワークを指します。

この領域では、設計担当、最適化担当、現地作業担当が別々になっていることも少なくありません。そのため、連携がうまくいかないと手戻りが増えやすくなります。

人が足りないだけでなく、部門間のつながりが弱いことも負担を増やす原因になります。横断的に理解できる人材の価値が高いのは、そのためです。

伝送バックホールは、装置・光・IPをまたぐ知識が必要で育成に時間がかかる

バックホールは、基地局と中枢設備をつなぐ重要な回線です。

ここでは、通信装置の知識だけでなく、光回線やIPネットワークの理解も必要になります。ひとつの分野に詳しいだけでは対応しきれない場面が多くあります。

複数領域をまたげる人材は少なく、育成にも時間がかかります。そのぶん、人手不足が解消しにくい職種です。

電気通信工事は、施工と施工管理を段階的に育てないと現場が詰まりやすい

工事の現場では、実際に手を動かす施工担当と、全体を管理する施工管理担当の両方が必要です。

どちらか一方が不足するだけでも、現場は回りにくくなります。とくに管理側は経験が必要で、すぐには育ちません。

段階的な育成計画がないと、管理できる人が育たず、慢性的な詰まりが起きます。長い目で人を育てる視点が欠かせません。

通信業界の人手不足は構造問題 採用・育成・定着をまとめて設計するしかない

通信業界の人手不足は、単純に「人の数が足りない」で終わる話ではありません。需要の増加、必要スキルの広がり、24時間体制の負荷、育成の遅れが重なって起きている構造問題です。

現実的な解決策は、採用だけを強化することではなく、育成と定着まで含めて一体で設計することです。若手を受け入れ、育て、無理なく働き続けられる環境を整えなければ、根本的な改善にはつながりません。

転職を考える側にとっては、スキルを横に広げることが大きな武器になります。ネットワークの知識に加えて、クラウドやセキュリティまで理解を広げていけば、市場価値は確実に上がります。

企業も個人も、この問題を感覚ではなく構造で捉えることが大切です。長い目で行動できるかどうかが、通信業界のこれからを左右します。

編集部(HR Div.)

転職者にとっての強みは、「横断スキル」と「運用設計の視点」です。ネットワークに加えてクラウドやセキュリティまで見られる人は、やはり強いです。

まとめ
  • 通信業界の人手不足は、需要増と必要スキルの広がりが重なっており、短期では解消しにくい
  • 不足は設計よりも先に、運用最適化や当番体制の現場で表面化しやすい
  • 公式データでは、就業者数、過不足判断指数、求人・求職の動き、工事側の年齢構成を押さえたい
  • 根本原因は、人口動態だけでなく、仕事設計と育成設計の弱さにもある
  • 転職では、ネットワーク単体ではなく、クラウドやセキュリティまで広げると強みになりやすい

【結論】通信業界はオワコンではない|伸びる領域と転職で勝つスキルの組み合わせ

「プロの支援」と「直接スカウト」を賢く使い分ける

専任のアドバイスが得られる「エージェント型」と、企業から直接の声が届く「スカウト型」
この2つを組み合わせて活用することで、自分では気づかなかった非公開求人や、客観的な市場価値を知るきっかけが広がります。

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転職やキャリアの悩みは、人それぞれ状況が異なります。本記事では、IT・通信業界に関する一般的な情報を中心にまとめています。すべての方に当てはまるものではありませんが、少しでも判断の参考になれば幸いです。
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